FX自動売買は危険だとか、大損すると言う人もいます。もちろんそれは間違いではありません。私も過去にFXで大金を失いました。
しかし、直近3年間は、リスク管理をしっかり行うことで、大きな損失を出すことなく、毎年利益を出せています。
FX自動売買のリスクを理解し、しっかり資金管理を行うことで、FX自動売買は長期的に安全に資産運用ができるツールになると考えています。
この記事では、リスク管理として私が実践している事を紹介していきます。
目次
FX自動売買のリスク、デメリットとは何か
まずFX自動売買のリスクを理解しましょう。
FX自動売買のリスク
- 為替は予想を超える急激な変動が起こる
- レバレッジ取引により、運用資金以上の損失を出す可能性がある
- マイナススワップを負担する
- 高値づかみしてしまう
為替は予想を超える急激な変動が起こるリスク
自動売買に限ったことではありませんが、為替レートは短時間で急激に変動することがあります。悪いニュース、テロ、自然災害、政治的な動きが発生すると、大きく短時間で変動します。それは自分の予想をはるかに超えると思っていてください。
私が経験した一番ひどい事件は、やはり「スイスショック」ですね。あれは本当にひどかったです。スイスショックが起きた日、スイスフランは一日で50円変動しました。スイスフランを取引している日本人はあまり多くないせいか、そこまで騒ぎにはなりませんでしたが。
当時AUD/CHFを自動売買ではなく、スワップ目的で保有だけしていました。史上最安値までは耐えられるような、余裕を持って運用していたのですが、スイスショックで史上最安値はあっさり更新。損切りを設定しなかったため、強制ロスカットと思いきや、ロスカットも間にあわないような相場だったので、口座に入れていた運用資金をすべて失うだけでなく、それ以上の追加損失を請求されました。
この事件以降、私はポジションに必ず「損切り」設定しています。あの日のことは一生わすれません。
レバレッジ取引により、運用資金以上の損失を出す可能性があるリスク
投資金額を失ってしまう、、、これは資産運用にはつきもので現物の株を持っていても、株価が下がれば100万円が50万円に減ることはあります。
FX取引は、レバレッジ取引という「少ない資金で高額のものを買う」という借金をして運用しているようなもの。少ない資金で利益を出せるメリットの反面、失敗したら、大損することがあるのです。
含み損が膨らみ続け、お金が不足してくると強制ロスカットが発動されます。
強制ロスカットされた場合、口座残高から必要証拠金以外のお金をすべてを失います(ロスカットルール100%の場合)。最初に説明したように、相場急変などの緊急事態では、ロスカットが間に合わず、投資した金額以上に負債を抱えることもあるのです。
FX自動売買は、通常のFX取引より初心者でも利益を生みやすいシステムですが、レバレッジ取引という点で大金を失うリスクは避けられません。
・できるだけ取引量の多いメジャーな通貨を選ぶ
・ポジションには必ず損切り設定をする
・損切り設定したレートになったときの含み損を計算しておく
マイナススワップを負担するリスク
FX自動売買はポジションを長期保有しやすいシステムと言えます。FX自動売買をスタートしてから、為替レートがポジションと反対の方へ動くと、ポジションはどんどん増えていきます。そしてレートが戻るまでは保有し続けることになります。
ポジションを保有するとスワップポイント(金利)が発生し、通貨ペアによって、プラスになるものとマイナスになるものがあります。マイナススワップになると、保有し続ける限り、マイナス負担は増え続けます。ようやくレートが戻って決済できたのに、マイナススワップのせいで、利益がマイナスになることもあるのです。
長期的に保有することは、自動売買では頻繁にあります。いわゆる塩漬け状態です。
私はEUR/AUDの売りポジションを2017年3月から持っているものがあり、そのスワップは1,000通貨あたりプラス5,443円スワップが貯まっています。
逆にEUR/USDの買いポジションは2018年5月から持っているものは、1,000通貨あたりスワップがマイナス6,016円です。レートが戻っても利益は出ないでしょう。。。
・できるだけプラススワップの通貨ペアを選ぶ
高値づかみしてしまうリスク
FX自動売買は、レート変動の波の頂点でポジションを保有することはよくあります。上昇相場、またはレンジ相場だったものが、下落トレンドに変わった場合、その波の頂点のポジションを抱えることになるからです。
下の図は自動売買の仕組みを現した図ですが、レートがこのまま103円あたりを推移した場合、106円と105円のポジションは高値づかみしたと考えてしまいます。
相場の動きを予想しているわけではないので、自動売買する場合は、気にする必要はないと思っています。高値づかみなのはあくまで結果論で、その時は高値になるかどうかは判断できないのですから。
しかし、最初の設定を超えて自動追従して上昇トレンドを追いかけて売買を行うシステムの場合、自分が最初に設定したよりも、思わぬ高値をつかむ可能性がでてくるので、どこまで追従するか管理することが必要です。
・長期間のチャートで高値圏と安値圏を把握しておく
・これ以上は買わない、これ以下は売らないと最初にルールを決める
ロスカットされないための対策
リスクについて説明しましたが、FX自動売買での最大のリスクは「ロスカット」されること。
相場の急変も、レバレッジ取引も、高値づかみも、「ロスカット」されなければ、問題はありません。
FX自動売買でのリスク管理とは、「ロスカット」されないように資金管理することなのです。
私が実践しているロスカットされないための対策を説明していきます。
ロスカットされない対策
- ロスカットルールを理解する
- 証拠金維持率は250%以上を維持する
- かならず損切りを設定する
- リスク分散する
- 含み損を計算する
ロスカットルールを理解する
ロスカットルールを理解するのは大前提です。
まずはロスカットルールを理解するために、FXリスク管理の重要ワード、「必要証拠金」「有効証拠金」「ロスカット」について説明します。
「必要証拠金」とは
必要証拠金とは、取引するために必要な、証券会社に預ける証拠金のことです。
FXの場合、取引金額の4%が必要証拠金とされることが一般的です。レバレッジは25倍ということです。
1,000ドル(1ドル100円の時)を取引きする場合には、4,000円の証拠金が必要ということになります。
「有効証拠金」とは
有効証拠金とは、証拠金として有効なもの、つまり口座残高から含み損を差し引いた金額です。含み益がある場合は、口座残高に含み益を足した金額になります。
有効証拠金のことをFX会社よっては「時価残高」、「純資産」など言い方はそれぞれ違いますが、同じことです。私は、有効証拠金という言葉がしっくりくるので、有効証拠金を使って説明していきますね。
「ロスカット」とは
ロスカットとは、「有効証拠金」(含み損を差し引いた口座残高)が、ロスカットルールで決められら基準を下回った時、自分の意志ではなく、FX会社によってすべてのポジションを強制決済されることです。
「ロスカットルール」とは
ロスカットルールは、取引口座によってルールが違います。必ず事前に確認しましょう。
一般的なFX口座のロスカットルールは「証拠金維持率100%」、「取引証拠金×100%」というふうに明記されている場合が多いです。
証拠金維持率とは、必要証拠金に対する有効証拠金の割合のことです。
証拠金維持率 = 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100
ロスカットルール「証拠金維持率100%」というのは、有効証拠金が必要証拠金100%を下回ったらロスカットということです。
「証拠金維持率100%」と書かれるとピンとこないのですが、簡単に言うと「口座残高と含み損益の合計」が、「必要証拠金」以上あればいいということです。
このロスカットルールは、取引口座によって異なり、「証拠金維持率50%」という口座を用意している会社もありますが、ハイリスクタイプになるのでおすすめしません。ロスカットされにくくなるのですが、ロスカット発生時に失う金額が大きくなります。
証拠金維持率100%でロスカットされると、必要証拠金の100%が口座に残ります。証拠金維持率50%でロスカットされると、必要証拠金の50%しか口座に残りません。自分の口座のロスカットルールをきちんと理解してから取引しましょう。
証拠金維持率は250%以上を維持する
「証拠金維持率」が重要なポイントであることは理解できたと思います。FX口座で自分の口座情報を見ると証拠金維持率は表示されていますので、必ず頻繁に確認しましょう。自分で計算する必要はありません。
証拠金維持率がどれくらいであれば安心なのか?
FX自動売買を安全に運用するため、レバレッジは5倍程度が理想です。レバレッジが5倍ということは証拠金維持率は500%になります。
含み損が増えてくると、どうしても証拠金比率は下がってしまいますが、それでもなんとか250%以上は維持したいです。250%以下になると、心理的にもやばい状態になります。
レバレッジが10倍以上、証拠金維持率250%以下になってしまったら、口座に追加入金するかポジションを少し減らしたほうがいいです。
証拠金維持率に対するレバレッジの一覧表
証拠金維持率 | レバレッジ |
2500% | 1倍 |
1250% | 2倍 |
500% | 5倍 |
250% | 10倍 |
100% | 25倍 |
かならず損切りを設定する
ロスカットをされない対策として、私が一番重要視していることは、すべてのポジションに損切り設定をすることです。
損切りとロスカットって同じじゃないの?と思うかもしれません。同じ意味で使う人もいますが、私は違う意味で定義しています。
「損切り」は自分の意志で行うもの。
「ロスカット」はFX会社によって強制的に行うもの。
FX自動売買のリスクでも書きましたが、損切り設定をしていない運用の怖さを体験しているので、これは絶対に外せないルールです。
私が実践している損切りの設定方法は、事前に損切り幅(pips)を決め、ポジション一つ一つにその幅で損切りを設定しています。同じ価格での一括損切はしません。ポジションを一本ずつ、少しずつ損切りしていきます。
ロスカットされる前にきちんと計画的に損切りを実行することで、事前に損失を把握し、許容範囲内に損失を抑えることが可能になります。証拠金維持率を頻繁にチェックする必要もありません。
経験から言えることですが、少しずつ損切りして、相場が反転するまで自動売買を続けることで、将来的に損失をカバーすることができるのです。
自動売買の設定情報を見てもらえれば、どのように損切り設定をしているか、詳しくわかると思います。
・損失金額を事前に把握し限定的にできる
・退場せず、自動売買を継続することができ、将来的に損失をカバーできる
リスク分散する
リスク分散は投資の基本ルールですよね。FX自動売買でも同じです。
FX自動売買でのリスク分散方法には以下の3つがあります。
- 「通貨種類」を分散する
- 「買い」と「売り」に分散する
- 「時期」を分散する
「通貨種類」の分散とは
運用資金を一つの通貨ペアに全額使うのではなく、複数の通貨ペアに分散したほうがリスクの点からすれば絶対にいいです。
自動売買を何年も運用していて感じるのが、豪ドルの値下がりが他より大きいこと。私は何種類もの通貨に分けて運用していますが、今までで損切りの発生率が高いのが豪ドルでした。もし、豪ドルだけで運用していたら、大変な思いをしていたことは間違いありません。
できれば相関性のない通貨を選ぶようにします。そうすれば、相場が悪化する時期が分散できて、トータルの含み損を抑えることができます。
「買い」と「売り」に分散とは
「買い」と「売り」は当然ですが、同じ動きになることは一切ありません。究極のリスク分散です。マイナススワップが気になる場合は、USD/JPY「買い」EUR/JPY「売り」組み合わせるなどおすすめの手法です。
「時期」の分散とは
積み立てのように少しづつ自動売買を追加して、自動売買の時期を分散するのです。そうすることで、違うレートの範囲に自動売買を仕掛けることができます。
含み損を計算する
FX自動売買を始める前に、必ずその設定の最大含み損を計算しています。
「必要証拠金」と「有効証拠金」が計算できれば、必要な運用資金がわかるのですが、「有効証拠金」は含み損で左右されます。
自動売買の最大含み損を計算することで、運用資金がいくらあればロスカットされないか計算できます。
ロスカットを防ぐ、すなわち「証拠金維持率を100%以上」にすることを、言い換えると「必要証拠金」と「含み損の合計」より多い金額を用意すればいいということになります。
含み損の計算方法
あくまで私の計算方法になります。そして、損切り幅を決めて自動売買を行う手法に限定されます。
まず、自動売買の設定をエクセルに落とし込みます。このエクセルを「リスク試算表」と呼んでいます。注文する価格、購入単位、損切り幅を入力して、計算式で、注文ごとの含み損、必要証拠金を算出しています。
【サンプル設定内容】
注文する価格:105円~110円に1円間隔
購入単位:1,000通貨
損切り幅:10円(10円下がったら損切りをする)
上限レートから10円下がったレート(100円)で含み損を計算します。
価格 | 購入単位 | 含み損 (100円) |
損切価格 (-10円) |
損切損失 | 必要証拠金 (4%) |
110 | 1,000 | -10,000 | 100 | -10,000 | -4,400 |
109 | 1,000 | -9,000 | 99 | -10,000 | -4,360 |
108 | 1,000 | -8,000 | 98 | -10,000 | -4,320 |
107 | 1,000 | -7,000 | 97 | -10,000 | -4,280 |
106 | 1,000 | -6,000 | 96 | -10,000 | -4,240 |
105 | 1,000 | -5,000 | 95 | -10,000 | -4,360 |
合計 | 6,000 | -45,000 | -60,000 | -25,800 |
この表からレートが100円になった時の最大含み損は -45,000円
95円まで下がったら損切りが6本成立して -60,000円だということがわかります。
- 最大含み損:-45,000円
- 最大損切りリスク:-60,000円
- 必要証拠金:-25,800円
- 必要資金の目安:45,000 + 25,800= 70,800円以上
「必要資金の目安」の意味は、70,800円以上あれば、-10円までの下落(レートが100円のとき)まで耐えることができる、ということです。永遠に耐えられるというわけではありません。
私は、自動売買の注文を出す前に、この試算表で含み損を計算し、納得してからスタートしています。このルールを守っていれば、損切り設定レートまで耐えられる金額が事前にわかりますし、想定以上の損失を出すことは、ほぼありません。
エクセルで計算するのは、ちょっとハードルが高いなと感じる人には、FX会社が必要資金の目安を公開していますので、それを参考にしてもいいと思います。
【私が利用している「リスク試算表」のエクセルを配布しています】
リスク管理のまとめ
FX自動売買で大損しないための対策を説明しましたが、私はすべての対策を実践しています。どれも外せない対策だからです。
リスク管理をするようになって、無謀な売買はしなくなりました。昔やっていたFX自動売買の設定を振り返ると、よくこんな設定でやってたなぁと思います。
確かに当時は利益がすごく出ていました。しかし、相場の流れが変わると損は膨らんでいき、途中で怖くなって無計画に損切りして、自動売買を終了させていました。最終的に利益が全部吹き飛び、トータルではマイナスで終了です。
FX自動売買をやってみるとわかりますが、利益が大きい設定は、失敗したときの損失額も大きくなります。最終的に利益が損失を上回らなければ、運用する意味はないのです。
長期にわたって大損しない、失敗しない運用するためには、リスク管理は必須と言えます。
今の私は昔の教訓を生かし、できるだけ損失が少なくなるようにしつつ、利益がのばせる設定を見つけようと試行錯誤を繰り返しています。
私の試行錯誤の結果は、運用中の設定や運用実績で報告していきますので参考にしてみて下さい。